新居靖子/Yasuko Nii

新居靖子のブログです。

芸術

講座にはほとんど足を運ばない私ですが、6月は初めて経験する講座に参加させてもらいました。
それはシュニーベルガー先生の講座。
学生を卒業した頃からだんだん自分のピアノ演奏に疑問を持ち、”なんで私のピアノの音色はきれいじゃないのだろう””音楽的に弾けないのだろう”などと悩む時期があった時に出会ったのがシュニーベルガー先生。
彼の音色を聴いて”きれい!”と感動したのを今でも鮮明に覚えてます。それから彼のレッスンを受けて初めて”音楽”というのを習ったような…。
大学の日本人先生のレッスンでは20分もかかるような大曲でも1時間のレッスンで全部見てもらって終わりだったのが、シュニーベルガー先生に習うとたったの1小節ごとって感じで、それでももちろん全くできない…。毎回1ページずつというような、それも妥協されながらのレッスンでした。
彼は何も知らない私に熱心に教えてくれたもんです。生意気で素直でない、それに出来の悪いやりにくい生徒だったのに、それは必死で教えてくれました。
内容は今まで習ってきたことと正反対のことばかり。
”あなたはどうして間違わないの?”間違わないことに不思議がられましたが、学生の時の試験前なんて先生に”ここは絶対に間違ってはダメ!”ってことしか言われなかったし…。
それから”あなたはどうして和音を弾くのに高音ばかりなの?”メロディーを聞かせるしか習わなかった私だから、内声の音の重要さなんて知らなかった。。。。
”あなたはなんでそんなに椅子を高くして上からたたくように弾くんですか?”鍵盤はたたいて弾くのじゃなく、優しいタッチで弾くって知らんかった…。フォルテを弾くのに椅子を高くして上から体重をかけて音を出しなさい!って教えられてきたから…。
そんな正反対のことをいつも言われて、シュニ先生のレッスンは目からうろこ状態で、あの時は何もかも新鮮やった。。。
それだけ習えばうまくなるってそのときは軽く考えてたけど、あれから20年もたったのに、いまだにシュニ先生に教わったことはできない。それだけ大きなことを教えてもらったということですが…。
そのシュニ先生、長いことご無沙汰だったのですが、彼が初めて講座を開くというので姫路まで行ってきました。彼と彼の生徒さん達(今は私は生徒ではないです)との研究会というもので、午前と午後とけっこう長時間かけていろんなことを学ばせてもらいました。いったいどんな内容なのかわからずに参加させてもらったのですが、それはそれはとっても楽しい時間で久しぶりに興奮状態。
シュニ先生のお話は発想がすごい。これと音楽をそう結びつけるのかぁ〜と感心することばかりで、彼のこの分野の才能はかなり素晴らしいものをお持ちなのに、誰も知らないなんてもったいない…。
彼の講座の内容をおもしろいと感じる人も少ないかもしれへんけど、イヤ、でも興味ある人にとっては魅力だと思う。
興味ある人はぜひ参加してみてください。絶対おもしろいし楽しいです。
詳しくはこちら

先日ビックリしたことがあったんですが、あるコメンテーターの先生の講評を聞いたとき、”みなさん時間を決めて練習してますか?ピアノが弾けないときは指を机の上でコツコツと音が鳴るように動かして指を鍛える練習をしましょう”っとおっしゃられているのを聞いて、今でもそんな古臭い、ただの指の運動だけの、音楽的に(レガートに)ならない弾き方を教えてる先生おるんやぁ…ってあきれちゃった!うちの生徒が聞いたら、先生そんなこと全く教えてくれへんって勘違いされそうや!そこには私の生徒はいなかったですが…やれやれ。
そんな先生が採点すると減点することばかりで、いっこもいいとこは聴いてくれないのね。音がきれいねとか、おもしろい演奏ですね、とかまだ小さいのにこんな難しい曲をよく弾いてるね、とか、よく曲を理解して弾いてるね、とか全くないの。その時の演奏した子供たちにそんな素質が全くなかったんちゃうよ。そんないいとこいっぱいの子たちだったのに…。
そんな先生にはシュニ先生の講座、まったくチンプンカンプンやろうね。(^_^;)

マティアスもレガートについては厳しいこと言ってたなぁ。”ハノンのような指を機械的に動かす訓練ばかりしてきたからレガートができないんです”ってある生徒さんに言ってた。厳しいこという人ちゃうんですけどね。でも”僕もそうでした。どれだけ無駄な時間を費やしたか…”とフォローもしておられた。マティアスはそれを得るのに10年かかったらしいですが私は20年経ってもまだやん…。レガート奏法は奥が深くて難しい。シュニ先生もレガートはそれはそれは厳しかった。。。でも彼にはそれを一番感謝してます。音楽(芸術)って目に見えるものなんてほんと一部しかなく、ほとんどが目に見えないもの。それをシュニ先生から厳しくたくさん教えてもらったのでね。

芸術って何か、日本人には理解がまだまだ乏しいように思う。私も理解できてない一人やけど、もっと人生に溶け込んでしまわなあかんと思う。特別な何かじゃなくて…。
先日、酒井雄哉大阿闍梨の「一日一生」って本読んだけど、この方すごーい人なんやけど、全然すごく感じないの。自然。
自分の身の丈にあった生き方でええ。そう思わせてくれた本でした。
ピアノも格好よく弾くんじゃなく、上手な演奏でもなく、自然がええ。自然体がええと思う。あるがままでよいのでは…。